久しぶりにある企業さんが訪ねて来てくれた。
以前ご自身で経営されているお店、商品のことでご相談に来られたり、
勉強会に来られたりと、なんどもお会いしたが、その人柄の良さで印象に強く
残る方だった。
もう三、四年ご無沙汰していた。
会社の後継者がいないので、将来を考え、地元の会社グループの傘下に入り、
あと五年がんばって、いい形で引き渡すことを考えたとのこと。
その人は、ハンコ屋さんを長年営んできた。
地域密着のお店として、いかに新潟らしい商品、サービスが提供できるか。
新潟県人ではないのに、新潟をこよなく愛する人だ。人柄がよく、商売に
向いているMさん。
Mさんがにこにこ現れ、「久しぶりですねー」と、挨拶をしながら
話をしはじめた。しばらくすると、
「そうそう」と、Mさんはバッグから何かを取り出した。
「何ですか?」
「これ、ずっとお世話になってきたので。前、お世話になった例のハンコなんです」
といいながら、袋を私に差し出す。
見ると、それはハンコの入った袋で、「今尾」と押してある。
「へえ?私にハンコを作ってくれたんですか?」
注文したっけ?と恐る恐る訪ねてみる。その方はにこにこして、うなづいた。
「これ、例のです。新潟漆器の・・・お世話になった商品だったので・・」
中を見てみると、赤い印鑑ケースに赤いハンコ。
これは以前やりとりをしていたころに、新商品としてPRしたいと
相談を受けていた、新潟漆器を特別な加工技術で商品化した、当時
新潟産の印鑑として売り込んだハンコ。
ハンコの素材は、かの佐渡発で活躍する太鼓のエンターテイナー「鼓動」
も太鼓のバチで使ってきたといういわくつきの丈夫で軽い素材。
それを使った新潟漆器の印鑑・・・。珍しいプレミア印鑑。
そう、この商品があって、この方との交流が深まったのだ。そのことを
思い出した。
「認印として使ってください」
いやー、もったいない。
ふとこの方がどんな思いで、これを作り、お持ちいただいたのか
と思うと、胸が熱くなってきた。
恐縮しながら、ありがたく受け取らせていただき、
印鑑ギフトという重さを改めて感じた。
新潟と出会い、いろんな方に出会い・・・。
いろんなものをいただき・・。
この印鑑も、これから私の一生を見守ってくれるだろう。
押すたびに、Mさんの笑顔を思い出すだろう。
どんな思いでつくってくださったか、どうされているか・・・と。
ギフトは人に気持ちを伝えるものだということを
改めて感じた次第。