子どものころには、日曜洋画劇場、金曜洋画劇場・・水曜洋画劇場??が連夜あって、
それは21時からの放送で、子供のためではなく大人のための時間で、小学生だった私には
憧れの世界のような存在で・・。
映画は非日常なるものであるが、名画は映画館に行かなくても自宅でも見られるようになり、
でもやはり、ちょっと特別な時間であり・・・。と、
・・・40年以上前の暮らしは、そんなものであったと記憶する。
とにかく
映画が、テレビ鑑賞という娯楽のなかで、重要なコンテンツであったことは間違いない。
ネットもない時代、海外旅行がままならぬ時代に、映画とはなんと楽しい娯楽だったこと
あろう。国も時代も乗り越えて、もう一つの世界に身を置けるなんて・・。
音楽も絵画も写真も素晴らしいが、ストーリーがあり、五感全部で人を感動させることができる
アートとしての映画は、今も変わらぬ、人間が生み出した最高の英知であると私は思っている。
演劇には演劇のすばらしさがあり、ミュージカルにはミュージカルの良さがあり、これは一重に
ライブ、生であるという点のリアル感であり、瞬間を共有することができるという点で最高であるが、
映画は完成された作品として、時代を経ても変わらぬ、普遍の作品としての凄さがある。
そして、観る人をタイムトリップさせてくれる不思議な力がある。
私は新しい映画よりも、子供のころ、若いころ見た作品に、今改めて興味がある。
作品自体ももう一度見てみたいが、昔の映画を観たい理由は、もうひとつある。
その当時の自分の感覚に触れたいのだ。
なぜ、その当時の自分がその作品を好きであったのか、今も好きなのか、それは今も変わっていないのか?
そのときの自分の感動をもう一度知ることが、さびれていた自分の何かを目覚めさせてくれたり、
とにかく、古い映画を観ることで、それがいい作品であればあるほど。今だからこその発見があるのだ。
つい最近、アルパチーノ主演のマフィア映画「カリートの道」をBS放送でみつけた。
これは25年前に映画館で観た作品だ。ずっと忘れていた。
なんで、こんなマフィア映画に魅せられたんだ?と思いながら、四半世紀ぶりに作品を観直してみる。
すると、古き良き時代のニューヨークが舞台であるのと、大好きなグランドセントラル駅がクライマックスに
出てくる・・・アルパチーノの演技も圧巻で、すべて・・どきどきはらはら・・・。
ああ、この場面、覚えている、ああ、これがこの映画だったのか・・・。
初めて観たときと変わらぬ緊張と興奮がカラダ中を駆け巡った。そして、
30歳のころの自分を思い出した。
そして、今もあのころと同じように感動する自分がいた。
その町に行きたくなったら その町が舞台の映画を観る。
そんな風に映画を楽しむことをこの四半世紀に覚えた・・そんなことも
改めて思い出した。
そして、今回も映画を観て、NYを懐かしんだ。
これからも、昔見た映画を何度も観て、そのときの自分に出会い、
忘れていたり、さび付いていたものを磨いたり、新しくしたりしたい。
映画は素晴らしい。
音楽は素晴らしい。
年を重ねてのアート鑑賞は、自分の人生へのふたたびの旅であるのかもしれない。