職人さんとの出会いを求め続ける

長崎での移動中、道すがらたまたま出会ったべっこう職人のお店。鼈甲がとくに好きだとか、興味があるというわけでもなかったが、店内で職人さんが仕事をされている様子が気になり、店内に入ってみる。長崎の伝統工芸のひとつだそう。ただし、最近はこの原材料も輸入禁止で簡単に手に入らなくなり、また後継人も減っているようで、将来的に厳しそうな業界ではある。今回足を運んだのは3回目。職人さんである旦那さんと、販売担当の奥様といったご夫婦の二人三脚ぶりがとても素敵で、ついついいろいろ聞かせていただいてしまう。
楽器のピックとしても使われているとのことで、伺ったときは東京からの注文品を作っておられた。
私は毎回、クロスのペンダントトップを探し、ステージや講演でも愛用させていただいている。楽器のピックと同様、これが首に付いていると、なぜか声の出がなめらかで良いようだ。そのことを告げるととても喜んでくださるのもうれしい。長崎にあって十字架の鼈甲とはなかなか・・・。ご主人に聞くと、天草のご出身だそうで、中学校を出てすぐに長崎へ修行に来られた・・・そしてもう50年以上経過されたそうだ。まさにこの道一筋のプロフェッショナル。鼈甲職人は全行程できる人から、一部だけができる人も含めたった30名程度だそうだ。そう聞くと、ひとつひとつの作品が貴重であり、なんとか次代に残さねばならないという気持ちにもなってくる。そのためには、その作品の魅力を若い人たちにも知ってもらう必要がある。材料の入手が難しいという点がネックであるが、なんとか長くがんばっていただきたいと、あの熱心なご夫妻のお顔を思い出すと思わずにはいられない。
日本でも世界で地道に頑張っておられる職人さんたちに出会うのが好きだ。彼らのもくもくとした仕事ぶりに惹かれる。やっぱりこの道一筋の生き方は素晴らしい。伝統工芸の維持とは人ありき。誰かに引き継がれることを心から願っている。写真べっこうJPG

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